異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
夢現(ゆめうつつ)
大原さんと消えた提督さんを置いて、私は少尉さんと、先に部屋に帰ることにした。
お疲れ様でした!と、爽やかに去って行く少尉さんを、今日は見送る元気もない。
精も根も尽き果てた……。
燃えカスのようになった私は、倒れ込みながらベッドに沈んで行く。

「あー………つかれたーー……」

思わず言葉が漏れた。
提督さんのいないベッドはとても広く、二、三回寝返りを打っても余裕だ。
だが、そんな解放感も長くは続かない。
すぐにその味気なさに寂しくなった。
提督さんがいないと、部屋が寒いしもベッドも冷たい……。
そんな思いを振り払うように、私は今日一日を振り返った。
三番勝負は大盛況で幕を閉じた。
このことで、ビッチに対する皆さんの目が、ほんの少し暖かくなったのは言うまでもない。
あれだけ悪口しか言わなかった艦内の人達が、帰りは笑って見送ってくれたりする。
だけど、善行は悪行をなかなか越えられない、というのは昔から言われてることよね。
いろんな人に色目つかって、誑かしてたお嬢様を許せない人は大勢いる。
結城大佐を筆頭に、恨んでる人もきっと多くいるんだろう。
まだまだ先は長そうだ……と、溜め息を漏らした。
別に私は、お嬢様の尻拭いをやってやろうなんてこれっぽっちも思わない。
だけど、お嬢様を大切に思う提督さんの為に、なんとか汚名を返上したい。
今はそれだけ思ってる。

………話し合い、どうなったかな?
二人ともわかり合えたかな?
時計の針の音だけが響く室内で、漫然とそんなことを考えながら、私は目を閉じた。
胸の辺りに残るモヤッとするものを、強引に眠気で紛らわせる。
すると、疲れた体は正直にそれに従って、私の意識はだんだん遠退いた。
…………………。
…………………。
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