異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「戦艦島には海獣を探知する機能が付けられている。だから、反応が現れたらすぐ反転しつつステルス機能を発動するんだが」

「あ、じゃあ安心ですね!」

そう言った私を見て、提督さんはゆるゆると首を振った。

「ところがそうでもない。奴らは気紛れだと言ったろ?極稀に闇雲に突っ込んでくるのがいて……そういうのに当たれば交戦しなければいけなくなる」

「交戦……大砲とか……魚雷とか?」

「まぁそういったものだ」

そうだ。
この島は戦艦島『那由多』
戦艦島というくらいだから、戦闘は視野に入れた作りになっているに違いない。
今まで、のほほんと過ごしてきた分、その事実が重く私にのし掛かった。

「あの……海獣と交戦して勝てるんですか?」

「勝てるわけない。どんな武器を持ってしても仕留めることなど出来なかった。精々撃退するくらいだ。だが、撃退もやつらの機嫌が悪ければ上手くはいかない。それに失敗して1隻沈没させられている」

「嘘…………」

「最初8隻あった戦艦島は今は7隻になった」

この世界の教科書で見た『ノアの方舟』の8隻。
そのうち1隻はもうないなんて………。
総人口の8分の1が滅んだということよね……。

「そうだったんですね……知らなかった……」

俯く私の頭を、提督さんはまたポンポンと優しく叩いた。
仕方ないことだから悲しむなと言ってるのかな?
この世界ではそれが普通の考えで、皆ある程度は覚悟しているのかもしれない。
でも、やっぱり悲しいことは悲しいし、誰も死なないで欲しいと思う。
これが、異世界から来た人間の甘い考えだとは十分わかっているけど、それでも那由多の人がいなくなってしまうことを考えるのは嫌だ。
見るからに元気が無くなった私を見て、提督さんはすぐに元気が出る言葉をくれた。
それが魔法の言葉だとどこで学習したのか。
提督さんはすごく優しい笑顔で言った。

「そろそろ昼食に行こうか」
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