異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
新しい関係
「それでね、明日から週2くらいでお願い出来るかしら?保育時間が終わってから30分くらい。理事長先生にも了解はとってあるわ」

おっと、仕事が早いよ、サキちゃんママ。
もちろん、御姉様がいいというなら私に意見などございませんとも!

「はい、大丈夫です」

私の返事と共に、側でソワソワしながら聞いていたサキちゃんが、花のようにキラキラした笑顔になった。

「わぁい!じゃあ、明日からね!!」

「ふふ、いいよ。頑張ろうね!」

「うん!!おねーさ……先生!!」

先生!?
なんと甘美なこの響き。
もうこの言葉だけで、全て許しちゃう!
政治家や医者が、こう呼ばれて喜ぶのが今では良くわかりますよ。
締まりがなくなった私の顔を、少し離れた場所で提督さんが見ている。
それに気付いて慌てて、顔を引き締めたけど……たぶんガッツリ見られてるよねぇ。
だって、笑いを堪えたような顔してるもん。
絶対『バカだなコイツ、舞い上がってんじゃねーよ』とか思ってるんだー!
うぇーん………。
そんな妄想の最中、当の提督さんはそっと私に近付き手を引くと、奥まった所の席に座らせた。
そして、自分は向かいに座る。
その席からは店内が良く見渡せ、私は物珍しくてぐるりと視線を滑らせた。
大人は楽しそうに談笑し、子供達は店内ではしゃぐ。
和やかな雰囲気に包まれていて、ほっこりと心が暖かくなった。
いいな、こういうの。
昔は打ち上げなんかにも参加出来なかったし、別格扱いされて、一段高い場所で座ってるだけだったから……。
ちょっと感傷的になった私は、ウルッと目を潤ませた。
だけど、充満するトマトとチーズの香りにお腹が激しく反応して、それどころではなくなった……。
悲しいかな、食い気は何事にも勝るのです!
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