異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
子持ちビッチになりました
クレーンが勢い良く上がり、ロープがピンと張る。
すると、トゲは触手からスポンとあっさり抜けた。
あっさりし過ぎて拍子抜け……タコなんて、目を瞑っているのでまだトゲが抜けたことに気付いていない。

「あの、抜けたよ??」

《………え?えーーー!もう?すごいね!ちっともいたくなかったよ?》

「良かったね!!」

と、ニコリと微笑むと、タコは忙しなく耳を動かし顔を薔薇色に染めた。
そして、何を思ったか、触手で私の体を持ち上げた!
ひぇーーー!!なんのアトラクション!?
タコはそのまま、私の体を自分の頭に乗せた。
ポヨヨン、ポヨヨンと弾む頭の上で、思わずへたりこみ船をみると、提督さんとフレディが二人揃って銃を構えている!
あ、拉致られたと思ってる??
ちょっと!やめてー!撃たないでー!

「セリ!!伏せてろ!そいつを撃つ!!」

提督さんが大きく叫ぶ。
私は腕をクロスさせながら必死で止めた。

「ダメダメ!!これ、たぶん遊んでるだけだから!このコまだ子供だから!」

身ぶり手振りのジェスチャーが伝わったのか二人は一旦、銃口を逸らした。
だけど警戒は解いてない。
何かあったらすぐに撃つ、そんな姿勢だ。

《あのひとたち、なにいってるの?》

タコは二人を見て不思議そうに言った。

「遊んでるのよ。ね、もう大丈夫?おうちに帰れる?」

《だいじょうぶ。いたくない。でも、おうちにはだれもいないからかえりたくない……》

「誰もいないの?でも、ママって叫んでなかった?」

《ママは……もう……しんじゃった……ここのヌシをぼくにゆずって……ながくながく、いきてたから、もうげんかい?だったんだって……》

「そうなの………」

タコの耳はシュンと下がり、目がうるうるとして今にも泣きそうだ。
堪らずよしよしと頭を撫でると、潤んだ大きな目が、はっ!と私を捉えた。

《ママみたい》

「ふふ、そう?」

《ママ……そうだ、きみをママってよんでいい?いや、ママになってよー!いいでしょ?》

……………それは……どうだろう?
これ、いいよ?っていった瞬間に海底に連れ去られたりとかしない?
ここは答えをよく考えてから……

《そんなことしないよ?つれさるなんてしないもん》

「は?あの……私喋ってない……あ、あーー、そっか、そういうのも出来たんだっけ」

この世界に来たとき、テレパシー的な何かでコブダイさんを呼んだことがある。
あの時のことは死にかけてたから、あやふやだけど、テレパシーが使えたってことだけは何故か鮮明に覚えていた。
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