異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「次に、諸君に伝えなくてはならないことがある。それは、私の婚約者、百瀬すずなのことだ。彼女が約一か月前、行方不明になったのは皆も承知だろう。そして、発見された……だが、それは、百瀬すずなではなく、桜庭セリという全く同じ顔をした別人だったのだ」

提督さんは熱く私を見つめ、ふっと頬を緩めた。

「知っている者もいるかもしれない。その昔、戦艦島ニーベルングにて、一人の女が姿を消した。変わって現れた同じ顔の女は異世界から来た巫女であり、それが現在のニーベルングの巫女である。桜庭セリもまた、ニーベルングの巫女同様、異世界からやって来た巫女だ。しかも、ニーベルングの巫女と同じ血を引いている」

前のめりになり、次第に熱く語りだす提督さん。
………何かとても嫌な予感がするんだけど……気のせいであって欲しい……よ?

「百瀬すずなと桜庭セリは何らかの力で世界を跨ぎ入れ替わった。それは事実だ。そして、やって来たセリを……私は……愛してしまった」

ひぇぇぇぇーーーーーーーー!!
艦内放送でなんてこと言うんだー!
ああーやっぱり……嫌な予感的中。
提督さんが、あの御姉様の弟だってことわかってたのに……私のアホ!
止めればよかった……もう遅いけど……。

「て、提督さん、ここでそういうことは……あの……」

私は小声で注意してみた。

「愛している!」

………無駄だった!!
熱くこちらを見る提督さんから、逃げるように目を逸らす。
すると、ガラス戸の向こうで二人の男がポカーンと口を開けていた。
そうなるよね……ごめんね。
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