異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
続・保育ルームの天使たち
ボスの女の子は愛田サキちゃん、子分1は宮川りょうくん、子分2は藤岡ひろとくん。
皆それぞれ名前を教えてくれて、私達は午後の給食がはじまる迄にはかなり仲良くなった。
サキちゃんのお父さんは軍人さん。
普段はお母さんとフロア7階で暮らしていて、お父さんとは週末だけ会えるらしい。
少尉さんが言ってたけど、軍部の人は操舵や内管理、機械室やボイラー室に配属されて半年交代で任務に就く。
週末には家族の元に帰るけど、あとは下士官部屋で過ごすのだそう。
つまりこれ、プチ単身赴任ということね。

りょうくんの両親はこのフロアで食堂を経営している。
かなり美味しいと評判の店で、イタリアの戦艦島サンタ・ルチアの厨房で3年修行したお父さんがシェフをしているらしい。
もう、聞いてるだけでお腹が空いてきた。
今度絶対提督さんと行こう!!

そしてひろとくんのお母さんは、商業フロアで服飾関係の仕事をしている。
「お洋服作ってるんだ」って言ってたから、デザイナーさんかな?
だけど、その店、どうやらすずなお嬢様御用達のお店らしくて、無茶な注文ばっかりしてたそう。
変な柄の変なデザインの服を作れと言われてたんだって。
ひろとくんのお母さんはたまに徹夜したりとかしてたらしいよ……。
私のせいではないんだけどね、なんだかすごく申し訳ないと思って謝っておいた。
文句を言われるかな?と構えていたのになんと、ひろとくん、

「全然平気!」

って笑ったのよ!
何で?って聞いたら、すずなお嬢様の服を作ると、かなりのお金が貰えるんだそう。
それって提督さんの仕業ですよね?
大変だったんだね……お疲れ様です。

子供達の話を聞きながら、私はこの戦艦島が一つの国として、ちゃんと機能してるんだなぁと感心した。
閉鎖空間ではあるけど、みんな自由で楽しく生きてるって感じがする。

「お姉さん?」

「ん?あっ!ごめんごめん」

サキちゃんの呼ぶ声に、私は手が止まっていたことに気がついた。
考え事をしてたからなー、いかーん!集中集中。
私は目の前の折り紙に意識を向けた。
子供達の情報の見返り……ではなくお礼に「とってもいいもの」ならぬ得意の折り紙作品をプレゼントしようと鋭意製作中だ。
島の保育園では、メチャクチャ喜ばれたけどこの世界ではどうなんだろう?
途中から歩んできた歴史が違うけど、きっと日本人だもの、折り紙文化あるよね??
と、サキちゃんに聞くと、やはりあった!!
ビバ、日本文化!!

「ねぇ、何作るの!?ねぇねぇー!」

と、りょうくんは私をせっつく。

「ふふふーー何でしょうねぇ」

手を機敏に動かしながら、右に左に上に下にと、折り紙の位置を変えていくと、それと同時に3人の頭も同じ方向に揺れている。
うーん、たまらん可愛すぎる………。
折り紙をじーっと、穴が開くほど見つめ好奇心を体一杯に表現したその姿。
子供って……本当に可愛いわ。
巫女じゃなかったら、保育園の先生になりたかったよ!

「あっ!!これって!」

あと2折りで完成というところで、ひろとくんが声をあげた。

「ドラゴン!!」

「うおーーっ!スッゲェー!カッコいいーー!」

りょうくんが立ち上がって叫ぶと、

「すごいわねぇ!!」

と、サキちゃんも釣られて立ち上がる。

「ふふっ!よしっ!これで……」

最後の折り込みを済ませると、そこには青い体のドラゴンが一体、立っていた。

「じゃあ、まずこれはりょうくんに!次はひろとくんにあげるね。サキちゃんには可愛いやつ作るからね!」

と言うと、わーー!!という歓声と共に子供達がワシャワシャとしがみついてきた。
嬉しいけどっ!窒息するーー!!
そうして、私はサキちゃんを膝の上に、りょうくんを右に、ひろとくんを左にぎゅうぎゅう挟まれた状態でひたすらドラゴンを折らされた。
24色をね、一体ずつね……。
うん、指がつるよ……。

「スゲェ!ドラゴンの国だぜー!」

「ひろと!戦わそうぜ!」

男子はもう24色のドラゴンに夢中で、金盥にドラゴンの国を作ってご満悦だ。
ふふ、単純単純。
男子はやっぱりそうだよね?
サキちゃんは、さすが女子。
そんな男子連中を冷めた目で見ながら、自分でも折ってみようと試行錯誤している。
5体も折れば、要領も得てわりと難しいドラゴンをちゃんと折れるようになっていた。
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