異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
郷愁のピアノ
次の日、私は朝一番で理事長室に向かうと、御姉様に三番勝負を受けると伝えた。
昨日の変な空気を心配したのか、御姉様の表情は暗い。
たけど、提督さんも了承した、と言うとほっとしたような顔になり、何やら冊子を手渡してきた。
ええと………。

『三番勝負 概要』

ああ、勝負内容かな?
私は手作り風の冊子を捲った。
中身の内容はこうだ。

1.算術………10分間で計算問題を何問とけるか
勝敗………正解数が多い方の勝ち

2.ピアノ……得意な曲を披露
勝敗………審査員5人が決定する

3.剣道………試合形式
勝敗………最大5分の三本勝負、二本とった者の勝ち。決着のつかない場合は判定。

以上、先に二番とったものの総合優勝とする。


うーん、算術と剣道。
これは公平感がある。
だけど、問題はピアノだ。
こういった採点ものは、審査員の心証に大きく影響する。
しかも、なんの基準も設けられてない場合はもう、好きか嫌いかで決まってしまう。
ということは、ですよ?
嫌われビッチのすずなお嬢様(私)は、かーなーりー不利なのではなかろうか?
かといって、それを御姉様に申し出ても結局は何も変わらない気がするし。
審査員なんて誰がやっても同じだろうしね。
でも、一応誰が審査員か聞いておこうかな?ほとんど知らない人だけど。

「あの、御姉様。ピアノの審査員はどなたが??」

「ん?ああ、それはな…………………」

…………………………。
御姉様?そんなに溜めるなんて、どんな悪巧みを!?

「言えん!!」

「はぁ!?」

あ、心の声がつい漏れました。

「いやな、事前に知るとワイロとか、そういった裏工作の可能性が」

いや、あの………。
全く考えもつきませんでしたよ、私。
今、その手があったか!って思いましたもん。
だけど、大原さんは……しないか……あんなに自信満々だったしね。

「御姉様。どちらも裏工作はしないと思いますが……」

「……まぁな、でも、後からいろいろ言われない為にな」

そう言って、御姉様は笑顔をひきつらせた。
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