SHALIMAR -愛の殿堂-
俺の内心を見透かしているのか、元カレは「やれやれ」てな具合で
「俺とあいつ、婚約までしてたんだよ。去年の暮まで。
今年ちょっとしたごたごたがあって、正月に……
婚約破棄した」
婚約――――破棄………?
知らなかった。彼女がこの男と結婚まで考えてたなんて。
しかも婚約までしてた色んな意味で深い仲だったなんて。
喉の奥の詰まりの固体(実際は固体じゃないが)が益々徐々に膨れ上がって、ぎゅうぎゅうと喉を締め付けている気がする。
「……どうして」
かろうじて声に出来た言葉は弱々しいものだった。
元カレは俺の質問に答えてくれそうにはなかった。口をへの字に曲げて、ちらちらとシェヘラザードの方を気にしている。
益々、その『ごたごた』が何なのか気になった。
「どうして?」
もう一度、今度ははっきりと問いかけると、元カレはキマヅそうに下を向いた。今度はその視線はシェヘラザードの方を向いていなかった。
いや、逸らしている。と言った方が正しいか。
「もしかして……彼女を裏切った―――んですか?」