👑Emperor bride

エドワードの過去!

ハアハア、ハアハア
「もうだめだよ。
カワンだけ逃げて!!」

「若様!気をしっかり持って、
逃げ延びるのですよ。
明蘭様もきっと逃げ延びておら
れます。」

やっとのことでマノリラ国の
入り口までたどり着いた。


「いいですか若様!
 ここを抜ければ私の故郷です。
 シッカリなさいませ。」



やっとの事で、戦火を逃れ
着の身着のままで走り続けて3日。

山を超え谷を超え若様を守る一心
で歩き続けた。
歩き続け1歩でも進まなければ
殺される。
小さな若様を励まし歩きつづけた。

マノリラ国に着いた時、
街には仕事終わりの若い者が
溢れていた。


パンを買おうと立ち寄った店の隣の
居酒屋で、城勤めを終えた
ヨンスンが偶然飯を食いに入ろう
としていてバッタリと
二人は出会った。


「カワン、カワンじゃないか!」

    「ヨ、ヨンスン。」

「どうした、宿下がりか?
 お前の町は大丈夫なのか?
 反乱軍が責めてると聞いたぞ。」


 「ウ、ウン。パンを買いに
  来たの。
  じゃ、じゃあね。」

「あれ?その子は?」

 「う、うん、あの、あれ、
息子よ。」

パンを一つ買うとカワンは

「またね、ヨンスン。」
そう言ってそそくさと逃げる
ように去って言った。

公園につくと
「若様こんなもので申し訳
ありません。
 ササ、お食べ下さい。」

「うん。お腹空いた、
カワンもう逃げなくて
 いいの?」

「そうですね。暫くは用心しましょう。」

「カワン、半分こだよ。
 カワンもお腹すいたでしょ。」

「若様!カワンは大人です。
 子供はたくさん食べないと
駄目ですよ。
 大きくならないと、
 食べて遊ぶのは子供の、
お仕事なのです よ。」


 「カワンも食べて。
  でないと僕も食べないよ。」

「ウッウッ、おいたわしい。
 エドワード坊ちゃま。父君と母君
は・・・・
 多分もう、撃たれたと思います。
 強く強くなられませ。

 カワンがずっとお側におります。」

「うん。カプカプ…ウウ、ズルッううん、
うん。
 ゴクッうっ、うわ~ああん、
ああ~ん。」


エドワードは、パンを一欠片口に
入れたが、涙でつまりそうに
なりながらも頑張って食べていた。

しかし半分はカワンに渡した。
今迄泣く所では無かった
何処へ行くのか分からない恐怖と、
止まったら捕まり殺される不安と、

どんな殺され方をされるのか
先の見えない恐怖は
小さな心を蝕んでいた。

6歳の子供が背負うには余りに
過酷な現実だった。
子供ながらに
一欠片のパンが逃げ延びた証拠
になり、心に隙間が出来たのだろう
エドワードもカワンも国を出てから
初めて泣いた。

「若様、いつかいつかきっと
帰りましょう。
それ迄しっかりお勉強をして
賢くなられませ。
必ず、アイツを打ち、
仇をとりましょう。」




エドワードはカワンの胸に潜り
込み声を上げて泣いた。

小さな丸い手や足は
傷だらけになっていた
痛いとも言わず、かさかさになった
エドワードの手に塗る薬もない。
カワンはエドワードの手をなで
ながらポタポタと涙をおとし
しっかりと抱きしめた。

「必ず必ずや、御守り致します。」

小さな小さなエドワードには、
こんな私でもただ一人の見方なのだ。
命にかけても御守りします、若様。


ふと暖かい体が負ぶさってきて
大きな手が二人を抱き締めた。

「ヨ、ヨンスン。?」

「カワン何故俺を頼らなかった。
 お前に惚れているのは
知っていただろう。」

 「ウッウッウッウッ、ヨ、ヨンスン。」


 「小さな家だけど、
お前を待つと決めた時、
金を貯めて、建てたんだ。
  少し町から離れてるけど、
おいで!

大丈夫だから安心しろ。
この子・・・

  お屋敷の若様だろう。
  役人がさがしてる。
  今、町はエドワード様を探し
ている急ごう。」

ヨンスンがエドワードを、おぶり
三人は素早く、ヨンスンの家へと
逃げ出した。

カワンは両親がいない。
人攫いに攫われ密偵になるように
育てられた。

表向きは孤児院だったが悪徳商人の
仮の姿でカワンみたいに20人は
いた。

カワンは売られてナチリコ国の
お屋敷を守る様になった。

カワンが売られたあと摘発されて
皆マノリラ国に、密偵として
勤めたいものは密偵になり、
他の仕事がしたい者は
その道へと進んだと聞いた。


カワンは運が良くいいご主人様に
恵まれ奥様も暖かい、
良いお方だった。
御恩は必ずお返し致します。
若様が、ご立派になられるよう
お育て致します。



カワンは、久し振りに帰った
自分の育った町の空を見上げ、
スヤスヤと
寝息をたてるエドワードの寝息を
聞き、天国の主にちかった。
     (アルジ)




それから暫く経ってカワンは
決心した。
「ヨンスン!町も落ち着いてきたし
 あなたはあなたの人生を考えた
がいい。
 私達がいれば要らぬ噂も聞くし
 あなたの人生が壊れる。

 早く、結婚しないと…
 私達の為に本当にすみません。
 幸せを掴んでヨンスン。」






 



 
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