ゼフィルス、結婚は嫌よ

義男は経営者だった

「いや、症状がひどくなってからはそうなりました。休みがちでしたがそれまでは小学校も、中学校にも曲がりなりにも通ってはいたのです。しかし症状が進んで、感染を恐れた医者からストップがかかってからは、もうダメでした。籠りっ切りです。今で云うニートですね。ははは」
〔注:ニートという言葉は2000年以降に使われ出した言葉で、この小説の現在のシチュエーションは1993年ですからおかしいのですが、ちょっとその、便宜上使わせていただいた次第です。合わせてフジ子ヘミングの活躍も2002年以降のことで年代合わず…なのですが同様な次第です。いい加減な設定で申しわけありません。読者諸氏に於ては悪しからず〕
「ふふふ。そんな、ニートだなんて…でも、本当に辛かったでしょうね」
「ええ、辛かった。父の稼業も手伝えませんでしたしね…」
「小父さんの仕事は確か…」
「屑鉄屋です。スクラップ工場を経営していたのです。ぼくが受け継いで、いまはお陰様で従業員も10人ほど雇い、株式会社化しています」
「まあ、凄い」
「いやいや、ははは。所詮クズ屋ですから。どうですか、惑香さん、がっかりされたでしょう?ぼくの身分を聞いて」
「いえ、とんでもない!会社を経営してるなんて、ホントご立派ですわ」
「ありがとうございます。そう云ってくださればとても癒されます。それであの…実は一昨年(おととし)の秋頃に、一度お宅に訪問させていただいて、株式の第三者割当の話をお母様にさせていただいたのですが、それをお母様からお聞きになられましたでしょうか?」
「えっ?株式の第三者割当…?ああ…」と惑香はいまさらのようにそのことを思い出した。
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