桜の木の下で
私の腕を掴んで離そうとはしない。

冷たくて、佐藤先輩しか見てない男を
嫌いになりたいのに……。

……なのに。
掴まれたところから、
菅田さんの熱が私に伝わって
私の心臓はドキドキだ。

「……。わっ、わかりましたから」
「えっ?」

私の声が小さくて、聞き取りづらかったのか
屈んで、私の顔に耳を傾けてくる。

だっ、だめ。
これ以上近づいたら、
顔が真っ赤になり過ぎて
どうにかなりそうだ。

「わかりました!!」
「おま、おまえ!!急に大きい声出すなよ」

菅田さんは、また不機嫌だ。
私から手を離し、自分の耳に手を当てた。

「すっ、すいません」
「加減を考えろ。あ~っ、耳痛てぇ」
「菅田さんが、耳を近くに寄せるからいけないんです」

俯きながら話した。

「なに?おまえ、真っ赤になってんの?」
「あっ、暑いだけです」
「……ふ~ん」
「はっ、話ってなんですか?」
「話?あ~、もういいや」
「えっ?」
「とにかく、送っていく」

私と手を繋ぐと歩き始めた。


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