足あとが消えないうちに
 
 
 
手紙には最後に、ごめんと書いて消された跡が残っていた。


馬鹿だなあ、と思う。


「……」


私自身もつくづく、馬鹿だなあと思う。勝手に寂しさで弱っている幼なじみに会うために走っているのだから。
旅行鞄に詰めた荷物の一番上には、くしゃりとなってしまわないように、分厚い手紙を丁寧に乗せてある。


彼が手紙に書いたとおりの行動を、私は多分してしまうかもしれない。
頬を叩くか怒るかしたあとの私はきっと、彼のその寂しさをどうにかこうにかしようと、私のために彼が用意してくれた暖かなものたちに包まれながら、お互いを暖めるのだろう。


降り積もる雪と寂しさに埋もれて、死んでしまわないように。


やがて来る雪融けと春の訪れを、穏やかな表情で迎えられるように。


夏も秋も、また訪れる冬も、そのとき私たちが何処にいても、これからを、大切だと言い合い過ごせるようになるために。


手作りのアップルパイなんて、とても楽しみだ。




――END――
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