クールな御曹司と愛され新妻契約
使いかけていたドライヤーを手渡しながら、そっと千景さんの顔色を窺うも、怒っている様子はない。
って、契約妻にいちいち怒るわけ、ないか。

幼馴染からの連絡を千景さんに見られていなくてホッとしたいのか、見た上で嫉妬に燃える瞳で問い詰めてほしかったのか、自分でもよくわからない。

画面が黒くなったスマホを握りしめ唇をきゅっと噛んだ時、無言のままドライヤーのスイッチを入れた千景さんが、私の後ろに立った。

そうして、長い指をゆっくりと私の黒髪に差し入れ、柔らかな温風を向ける。

「今夜は俺が、麗さんの髪を乾してもいいですか?」

「へ……? いえ、自分で、やります。長さがあるせいで時間がかかっちゃうので、大変ですから」

驚きながら、大きな鏡越しに上目遣いで彼を見上げると、千景さんは長い睫毛を伏せたまま、まるで優しく慈しむように私の髪を撫でた。

「それは無理な相談ですね。このままベッドまで二人の時間を堪能したいので、ドライヤー係を外されたら、あなたを後ろから抱きしめ続けることになります」

「ええっ、その二択なんですか!? ううん、抱きしめられるのは、恥ずかしいので……では、ドライヤー係をお願いできますか?」
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