クールな御曹司と愛され新妻契約
「嫌っ……離して、ください」

背後で閉まった扉の方へ後退りしながら、彼の腕の中で身を捩る。

けれども、逆に逃すまいと力強く抱きしめられ、胸が切なく痛んだ。

「実友さんから全部伺いました。もうすぐ結婚をするけれど、諸事情で婚約指輪をはめることができないって」

悲しみや愛しさという感情を必死に抑えるために、唇を噛みきゅっと締める。

それから出来るだけ冷静に事実を確認すれば、千景さんは「実友?」と怪訝なそうな声で返した。

「実友さんは、千景さんとの赤ちゃんを身籠もられているんですよね? 全てを知ったからにはこんなこと、絶対許されませんっ」

だからもう離して、と彼の胸板へ手のひらを突いて押し返す。

「ちょっと待ってくれ。意味がわからない」

千景さんは眉間を押さえて、酷く困惑した表情で目を閉じた。
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