クールな御曹司と愛され新妻契約
眉をハの字に下げ静かになった私の髪を、千景さんが優しく撫でる。
「どんなメッセージを打とうとも、返事はいつも【かしこまりました】ばかり。
祝日に私服で出勤してくれと無理難題をふっかけても、車で家まで送らせてほしいと申し出ても、仕事に熱心過ぎて少しも振り向いてくれない。
そんなあなたが『結婚する』と聞いた時は、絶望感に打ちひしがれて気が狂いそうだった」
フッと自嘲気味に微笑むと、彼は私の手を取る。
「けれども話を聞いてみれば、麗さんが自ら望んだ男との結婚ではないらしい。
昔あなたが打ち明けてくれた『男性から告白されるのが怖い』という言葉は、今でもちゃんと覚えています。
だからこそ、告白の代わりに〝契約結婚〟を持ちかけた」
「え……?」
「双方の利益を満たせる契約結婚であなたを助けて、俺に縛りつけることができるならそれでいい。多くは望まない。
……そう思っていたのに、デートを重ねる度、どんどんあなたが欲しくなった。あなたに、俺に溺れて欲しくなった。
――ですから、出さなかったんです。婚姻届を」
「どんなメッセージを打とうとも、返事はいつも【かしこまりました】ばかり。
祝日に私服で出勤してくれと無理難題をふっかけても、車で家まで送らせてほしいと申し出ても、仕事に熱心過ぎて少しも振り向いてくれない。
そんなあなたが『結婚する』と聞いた時は、絶望感に打ちひしがれて気が狂いそうだった」
フッと自嘲気味に微笑むと、彼は私の手を取る。
「けれども話を聞いてみれば、麗さんが自ら望んだ男との結婚ではないらしい。
昔あなたが打ち明けてくれた『男性から告白されるのが怖い』という言葉は、今でもちゃんと覚えています。
だからこそ、告白の代わりに〝契約結婚〟を持ちかけた」
「え……?」
「双方の利益を満たせる契約結婚であなたを助けて、俺に縛りつけることができるならそれでいい。多くは望まない。
……そう思っていたのに、デートを重ねる度、どんどんあなたが欲しくなった。あなたに、俺に溺れて欲しくなった。
――ですから、出さなかったんです。婚姻届を」