クールな御曹司と愛され新妻契約
私たちの仕事はお客様のご自宅を綺麗に保つこと。
なので訪問先のご家庭に、ハウスキーパー用スリッパなど不要なものを増やしてもらってはいけない。

うちの会社では自身専用のスリッパや各種掃除道具を用意し、毎回綺麗に手入れをして、こうして持参するようになっている。


先輩が早速水回りの掃除に取り掛かっている間に、私はいつも通り広いお屋敷内の各部屋を回って埃を落とし、隅々まで掃除機をかける。

冷泉様のご自宅には基本彼がいない時間帯にお伺いするが、冷泉様のご実家でもあるこちらのお屋敷では、お祖母様の在宅中が私たちの勤務時間だ。

お祖母様と同居中のお祖父様とお父様は、都内にある冷泉ビバレッジの本社ビルに出社中である。

冷泉様のお母様は、元々体が弱かったことと産後の肥立ちが悪かったことが重なり……彼が幼い頃に、他界してしまったそう。
その後お父様が冷泉様を連れてこの家に戻り、お祖母様が母親代わりを務めたそうだ。


そんなお祖母様には、私も入社当時から大変お世話になっている。

結婚のことだって、最初にお祖母様が冷泉様に話して下さっていなければ、こんな風に契約結婚という形で彼から助けてもらえることはなかっただろう。
< 33 / 192 >

この作品をシェア

pagetop