クールな御曹司と愛され新妻契約
『さて、今日も頑張るぞ』と気合を入れている間に、ポーンと静かで上品な音が鳴り、目的のフロアへ到着する。

大理石の床が広がるメインエントランスとは違う、足音を響かせないための工夫がなされたホテルライクなカーペットが敷かれた内廊下を通って、二つあるお部屋のうち片方のインターホンを鳴らした。

すると、やや時間があってから分厚いドアが開く。

「こんにちは、EmilyMaidsハウスキーパーの三並麗です」

「こんにちは、三並さん。どうぞ入ってください」

そう言って微笑みを浮かべるのは、この超高級住宅の住人で雇い主である白皙の美貌を持つ御曹司――冷泉千景(れいぜいちかげ)さんだ。

爽やかな印象の王子様然とした甘いマスクは、大人の色気に溢れている。

艶やかな黒髪はワックスで整えられており、お祖母様譲りの吸い込まれそうな青い瞳には、二重瞼を縁取る長い睫毛が影を作っていた。

俳優のように足が長くスラリとした細身ながら、胸板は程よく逞しくて、ウエストラインは美しく引き締まっている。
身長は私より二十センチ以上高いので、百八十センチを超えていそうだ。
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