無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「高三の時にさ、朝日が路地裏で年上の男の人達相手に喧嘩してるの見たんだよね。
その時に“ひな”って名前を聞いて、体を張ってその名前の彼女を護ってるんだと思ってた」

「うん」

「そこまで大事にされてる彼女がすごく羨ましいと思って、そんな関係も羨ましくて、なのに別れたって聞いてショックで、だけど心のどこかで喜んで……」

「うん」

真未の話に朝陽は嬉しそうに微笑みながら相づちを打つ。
ここ最近の目まぐるしいほどの心境の変化に疲れて、真未はまだベッドに半身を預けていた。

「それってさ、その時から俺のこと好きだったって告白だと思っていいよね?」

「……なんでそうなるの?」

「だって、俺の彼女が羨ましくて別れたって聞いて喜んでたんでしょ?」

「ん?所々抜けてるような……」

「細かいことは気にしない。
で、今日姉を見て元カノかもしれないって思って嫉妬したんだろ?」

「嫉妬……なのかな?
気になってたのは確かだけど」

そう言いながら包帯を巻いた手を見ていると朝陽がその手をそっと下から包み込むように持ち上げた。

「気になって火傷した?」

「……否定はしない」

「バカだな、直接聞きに来ればよかったのに」

そう言って優しく微笑む朝陽を見上げるけどすぐにばつが悪くなり目を反らした。

「付き合ってもないのに、どんな関係なのって聞きに行けるわけないじゃない」

「じゃあさ、付き合おうよ」

ごく自然に言われたその言葉に驚きのあまり目を丸くして朝陽を見ると、朝陽は真っ直ぐ真未を見つめていた。
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