過去の精算

彼が日本へ帰って来て1週間が経ったが、私はまだ彼に会ってない。
彼と交わした約束が果たせない事に、私は後ろめたさを感じていた。
その為、彼と顔を合わせない様、彼を避け逃げていたのだ。

「木村さん、今夜若先生の歓迎会が院長宅であるけど? どうする?』

「すいません。 欠席でお願いします」

「やっぱり出ないか?」

懇親会や合コンなどに誘われても、今まで一度も行った事がない。
お金に余裕が無いのと、職場の人と仲良くするのは、あまり好きでは無いからだ。
食事の場や飲みの場で、私の生い立ちを知る人が居ないとは限らない。
私の生い立ちを、面白おかしく話す人が居るかも知れない。
そうなれば、私も傷つくし、場の空気も悪くなるからだ。

『だから、誘わなくても良いって言ったじゃ無い!』

『でも、院長夫人が当直以外事務員も全員参加だって言ってたじゃない?
木村さんにもちゃんと声かける様にって!
念押されたし…?』

院長夫人が私を…?
珍しい事もあるもんだわ?

『大丈夫よ!
木村さんが居なくても絶対分からないわよ!
もともと、彼女影薄いんだから』

院長先生には、随分お世話になったけど、これまで院長夫人には良い印象はない。
子供の頃、お母さんに傘を届けに来た時、“子供が、ウロウロするところじゃない! 早く帰りなさい!” と、凄い目で睨まれた事がある。
それ以来、病院には近寄らない様にしていた。





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