過去の精算
だが、希望していた大学に合格して、上京する日の前日、母が仕事中に倒れたと連絡があり、なん年ぶりかに、私は前谷総合病院へ訪れ母の病を知った。
母は、私を大学へ行かせる為に、病に侵されている事を、私に隠し無理して働いていたのだ。
何も知らなかった私は、どれだけ母に負担を掛けていたのだろうと、悔しさと情けなさで、病院の待合室で一人泣いた。
院長先生は、そんな私を慰め、有難いことにお母さんの事もお金の事も心配しなくて良いから、予定通り上京しなさいとまで言ってくれた。
何故そこまで、親切に言ってくれるのかと聞くと、院長先生は、私の父に大変な恩義があるからと言った。
確かに昔、母から聞いた事があった。
私の両親と、院長夫妻とは昔からの付き合いだと…
でも、母一人子一人の私には、母を置いて町を離れる事は出来なかった。
院長先生の折角の申し出を断り、私は大学入学を辞退し、院長先生のお世話で、院内食堂でのアルバイトをしながら、通信で医療事務の資格を取ったのだ。
そして母は一年後、私を一人置いて逝ってしまった。
母が亡くなった時にも、葬儀などの事では随分院長先生にはお世話になった。