希望の夢路
ああ、寝てしまった。
泣き疲れて、寝てしまったのか、僕は。
苦笑いしながら、彼女の頬に顔を寄せる。

「うっ……心愛ちゃん…」

だめだ。彼女の顔を見るたび、泣きそうになる。現に今、泣いてしまっている。僕はこんなに、弱かっただろうか。
こんなに弱い人間だったとは思っていなかった。けれど、大切な人を失うかと思うとこんなにも心が揺れて苦しいのか。
胸がきゅーっと締め付けられる。

彼女の顔を眺める。
とても綺麗だ。
顔面蒼白だから、ただでさえ真っ白な顔の君は更に血の気が引いて見える。
すると、彼女の指がー
ぴくぴく、と動いた。

「心愛ちゃん!?」

僕は驚いて彼女を見た。
しかし、指はもう動かなかった。
気のせいかな…?
ほんのちょっとの動きだったし、
見間違いかもしれない。
そう思っていたら、

「ひ、ろく…」

彼女の声が、僕に響いた。
やっぱり、君の手が動いたのは
見間違いなんかじゃなかったんだね!

「心愛ちゃん…!」

そう叫ぶと、彼女の目が静かに開いた。

「ん、……ひ、ろく、」
「うん、うん、僕だよ、ひろくんだよ」
自分で自分のことを、ひろくんだよ、
って言うのも、一瞬何言ってるんだ僕は、と思いながらも嬉しくて嬉しくて
僕は彼女を強く抱き締めてしまった。
彼女が怪我をしているということもすっかり忘れて、強く強く。
絶対にもう離さないよという意味も込めて。

「い、たい」
「ああ、ごめんごめん」

ああ、本当によかった。
ああ…力が抜けそうだ。

生きた心地がしなかった。
彼女が全然目が覚めないというだけで
息が止まってしまうかと思うほどに
悲しくて苦しくて、我を失っていた。

「ここ、ど…」
「僕と君の家だよ」
僕は、彼女にここに来るまでの経緯を話した。
「ごめん…」
「いいんだよ。…おはよう、心愛ちゃん」
僕が一番言いたかった言葉を君に掛ける。
「おはよう、ひろくん…」
彼女はにっこりと笑った。
ああ、これが見たかったんだよ僕は。
ああ、幸せだ。

それから僕は、彼女が言い渋っていたことを聞き出した。
彼女に暴行した三人組の女性。
許せない。
女性といえども、大切な彼女を傷つけたことに変わりはない。
許されることではない。

「どうしたの?ひろくん」
「ん?なんでもないよ」
僕はそう笑って、彼女の髪を撫でた。
彼女は、気持ちよさそうに笑いながら目を閉じた。







< 184 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop