希望の夢路
「はーい!」
楊香は左手を上げた。
まだまだ子供だな。でも、いい子だ。
「何すればいいの?」
魁利は首を傾げた。
「心愛ちゃんをゆっくり僕の胸から離してほしいんだ」
「それだけ?」
「ああ、魁利。頼むよ」
静かに頷く魁利の横で、腕まくりをして気合いたっぷりな楊香と目が合った。まずいぞ、これはー
「博人!任しといてっ!よーし、心愛を引き剥がすぞぉ〜!」
「いや、ちょっと、楊香。優しくだよ、優しく」
「わかってるって。ふっふっふ…」
楊香、やめてくれ。
良からぬことを考えているのは、目に見えているぞ。心愛ちゃんを虐めるのだけは、いくら可愛い楊香でも許さないからな。

楊香と魁利はゆっくりと、彼女を僕から離した。彼女は、魁利と楊香に支えられてかろうじて立っている。
「よし、二人ともありがとう」
僕は、彼女をお姫様だっこして歩き出した。
「オヒメサマダッコー!?やだやだ!博人!私にもしてよ!」
楊香が大きい声を出したので、焦った。彼女が起きてしまうかと思ったが、彼女はぐっすり夢の中。
ほっと胸を撫で下ろした僕は、坂をゆっくりと登った。二人は僕の後ろをついてきた。

坂を上るとすぐに、木のベンチがあった。そのベンチは、真ん中にある木をぐるっと囲むように円い形をしていた。僕はそっと、彼女をベンチに座らせた。
すやすや眠る彼女の隣に座り、
僕は魁利と楊香に言った。
「あのさ、二人にお願いがあるんだ」
「なになに、ひろとーっ!」
「心愛ちゃんを、ゆっくり寝させてあげてくれないか。疲れて寝れてないみたいだし」
沈黙する二人。
沈黙を破ったのは、魁利だった。

「ごめんね、博人さん。私、つい心愛ちゃんと話すことに夢中で、心愛ちゃんの気持ちなんか、全然考えてなかった。今日から気をつける」
「うん、わかってくれたならいいんだ」
一方の楊香は、黙っている。
「わかった。その代わり」
「その代わり?」
「ねえ、博人。手伝ってあげたんだから、ご褒美くらい、もらってもいいわよね?」
「え?」
楊香の怪しくも綺麗な笑みに、思わず僕は息を飲んだ。
「だって、さっき言ってたじゃない。
あとでかまってくれるんでしょ?」
僕は、楊香からの上目遣いに弱い。


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