希望の夢路
「心愛ちゃん…!?しっかり…!」
彼女が力なく地面に崩れ落ちるところを、僕がすんでのところで受け止めた。何度呼んでも、彼女は応答しない。
彼女が力なく、ぐったりしている理由はすぐにわかった。
彼女は僕の胸でぐっすりと寝息を立て、すーすーと眠っている。
「…全然、寝てなかったんだな。
目の下に少しクマができていたのは、そのせいか…」
周りを見回すが、ここには僕と彼女だけで他には誰もいない。
一人では、彼女の体勢を動かすことを難しい。
なにせ、彼女が僕の服をぎゅっと握りながら抱きついているのだから動きにくい。
とにかく彼女を抱っこして上に運んで、どこか座れる場所を探さないと。

確か、坂を上がってすぐにベンチがあったはずだ。とりあえずそこへ彼女を座らせるためには、二人の力が必要だ。
「魁利!楊香!」
そう叫んでも、二人が来るという確証はない。しかし、とりあえず言ってみた。
「はいはーい!!ひーろとー!!」
楊香は嬉しそうに僕に駆け寄ってきた。
「もういいの?いちゃいちゃ終わった?」
魁利はにこやかだった。
「うん。もう大丈夫だよ、魁利。
…って、おい!楊香、何してんだよ!」
僕は慌てた。
僕にぴったりとくっつく熟睡中の彼女を、楊香が僕から引き離そうと思い切り引っ張っている。

「おいおい、やめろって」
「やだ。博人の胸で甘えていいのは私なの。私!」
楊香は是が非でも僕の胸にいる彼女のポジションを奪おうとしている。
嫉妬深いんだよな、この子は。
「ぬう〜」
彼女を引き剥がそうとする楊香の手首を、僕は掴んだ。
「楊香、やめろ」
少し怒ったような言い方の僕に、
楊香は怯んだ。
「だって…」
楊香は悲しいような寂しいような顔を地面に向けた。
「後で構ってあげるから、心愛ちゃんは寝かしといてあげて」
「うう…わかった」
楊香は拗ねながらも、頷いた。
「魁利、楊香。ちょっと手伝って」
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