もう、我慢すんのやめた


「なに?」



弥一のそばにいることは思いのほか苦じゃなくて、昔に戻ったみたいにスーッと状況を受け入れている自分がいた。



「今週末、無事に俺の松葉杖が取れたら。来週の日曜日にデートしよう」

「……は?」

「何だよ、そのあからさまな嫌な顔は」



私の顔を見て、不服そうに口を尖らせた弥一。
だって、そんなの急にビックリするじゃん。


デート、なんて。



「水族館。小さいころ、一緒に行ったことあるだろ?あそこ、今度は2人で行こう」

「水族館……って、無理だよ!」

「はぁ?なんで?」

「水族館なんて、絶対に人混みだもん!日曜日なんて絶対ダメ!いくら松葉杖が取れたって……そんな、すぐには」



確かに弥一は運動神経が良いし。


昔から努力家で、今回のケガだってきっと人知れず努力をしているんだろうと思う。それが、ここまで早く弥一のケガを回復させてるってことも。


でも、早く治せばいいってもんじゃない。


先生だって、ゆっくり時間をかけて綺麗に骨がくっつくのがベストだって言ってたし。


これからも弥一が野球を続けるなら、尚更。
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