もう、我慢すんのやめた


「っ、ごめ、ん……」



職員室とは反対の佐倉の横を通り抜けた私は、ただひたすらに走る。


「おいっ!どこ行くんだよ!」



驚いたような荒っぽい佐倉の声に振り向くこともしない。


やっぱり、伝えようなんて思わなければ良かった。
そしたら傷付くこともなかったし、佐倉のあんな顔、見なくて済んだ。


私が何を言おうとしてるか、分かってた?

だから、あんな困った顔して遮って、私のこと『松永』なんて呼んだの?


私の気持ち、知るのが嫌だった?
それとも、今さらだよって呆れちゃった?

都合よすぎだよって、いい加減にしろって思った?


……どんどん溢れる涙は、全然止まらない。


"佐倉が好き"


この気持ちを、やっと言えると思ったのに。今度こそ全部投げ出して、伝えたいって思ったのに。


だけど、それすら私の勝手で。
別に佐倉が望んだことじゃない。


どうして、上手くいかないんだろう。


ちょうど職員室のドアが開いて、私を呼ぶ先生の声が聞こえたような気もしたけれど、聞こえないフリをした。


『もう松永の涙、拭いてやれねぇ。だから、俺の前で簡単に泣くな』



───佐倉はもう、前に進み始めてた。
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