もう、我慢すんのやめた

「芽唯、本田先輩と知り合いなの?」

私と弥一の会話を静かに見守っていたテツが、興味ありげに机から身を乗り出す。


言おうかな……。
やめておこうかな……。

そんな気持ちを行ったり来たりした私は


「……あー、うん。幼なじみなんだよね」


素直に言うことにした。
変に隠したって、きっと関係を疑われる。

なら、幼なじみって言葉でここは逃げよう。
そんなずるい考え。


「へぇ〜!芽唯にも幼なじみいたんだな」

「まぁね」

「……やっぱ、恋愛感情とかあんの?」


───ドクンッ


テツの言葉に心臓が嫌な音を立てる。
弥一と彼女は別れたみたいだし、もし弥一を好きでも誰にも迷惑はかけない。


それなのに私は一体、誰に後ろめたいんだろう。


「"やっぱり"っていうのは、テツが萌菜に"恋愛感情"があるって意味でいいの?」

「……はぁ!?な、なんでそうなる?」

「あれ?違った?……萌菜、結構モテるからうかうかしてると取られるよ」


動揺を隠しきれないテツに、ニッと口角を上げて笑えば「も、萌菜には言うなよ!!」なんて小学生みたいなことをいうテツ。
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