もう、我慢すんのやめた
そんな紗蘭ちゃんの可愛さには、もちろんテツもメロメロなわけで。
萌菜にしてみりゃ、今回の臨海研修……気が気じゃないだろうな。
「……ダメ、私から言っておく!」
「は?いいよ、俺から言うって!話しかけるきっかけにもなるし」
萌菜の気持ちに全く気付いてないテツに、”鈍メンやれやれ”と思う。
「改めて、よろしくね。佐倉くん」
どっちが紗蘭ちゃんに伝えるかを、まだ争っているふたりを横目に
私はまた、無謀なチャレンジを試みる。
言葉と一緒に、右手を差し出してみたものの、
さすがの私もこんなに拒絶されたのは初めてで、
今回は少しだけ声が震えてしまった。
きっとまた、佐倉くんにウザったそうな顔で見られるんだろうなぁって。
そう思うと、ちょっと怖い。
言わなきゃよかったかな……なんて、私らしくないことまで考えたりして。
「……よろしく」
「え?」
「……なんだよ」
だけど、私の鼓膜を震わせたのは紛れもない佐倉くんの声。
差し出した私の手は、相変わらず独りよがりの宙ぶらりんだけど。