毒林檎と鉄仮面

ラムネのビー玉の取り方

課題課題課題、テレビ、犬の散歩、課題…。
気づいたら夏休みも半分近く終わり、ノアとの約束の八月十四日を迎えていた。
夏休み前日彼女と連絡先を交換はしてみたものの、特に会話も無いためお互いのトーク履歴はゼロだ。時計を見ると集合時刻7時の1時間前になろうとしていた。僕は制服に腕を通す。その時ポコンと僕のケータイが何日かぶりに鳴った。画面を見るとノアから一言、「私服で来ること。」とだけ書いてあった。エスパーか何かなのだろうか。着かけた制服をハンガーにかけクローゼットに戻し、隣にあったTシャツに手を伸ばした。
家から学校は徒歩15分くらいのとこにあるため少し早めに着いた。ケータイでゲームをしながら待つ。この前久しぶりに開いたゲームが思ったよりも面白くて最近自分の中で熱い。ゲームっていうのはたまにやるからいいもんなんだな。
そういえばクラスの花火と肝試し、みんなノリノリだったな。まぁ僕は行かないけど。ノアもきっと行かないだろう、というか彼女においてはクラスのメッセージグループに参加してないよな。
そういえばノアは、僕に笑わない理由聞いてこないな、そんな気にしてないのか。
色々なことを考えながらゲームをしていると気づいたらハイスコアを達成していた。
僕はスポーツやゲームにおいてそうだが、そのことについて考えすぎるよりちょっと他のことを考えてみたり無心でやる方が上手くいく方だ。
「やっほ」
画面を見ていて気づかなかった。上を向くとノアが居た。普段下ろしている長い髪をゆるく1つにまとめ、ワンサイズ大きめの白いTシャツとパンツかよそれっていうほど短い水色のズボン。そしてピンク色のビーチサンダル。ソーダ味のシャーベットアイスを食べながら来た彼女はこれまた絵になった。どこかのCDのジャケットにありそうだ。ズボンから覗く白くて柔らかそうな太ももといつも制服に覆われている細い腕。普段は見られない露出になんだかこう、感じてはいけないものを感じた。
「やっぱ夜って最高、本当はこういう服の方が好きなんだ」
彼女はそう言って微笑む。その表情は教室で見た冷たい表情からは想像もつかないくらい華のあるものだった。
「だとしても少し出しすぎじゃない?」
僕にそう言われ彼女はきょとんとした顔で
「そうなの?まぁショウゴには裸見られてるし関係ないよ」
「それとこれは全然関係ないじゃんか」
「えー」
彼女はそう言ってまた笑った。最近彼女はよく笑う。素敵な笑顔で。僕にしか向けられないこの笑顔に優越感のようなものを感じてしまっている自分に少し嫌気がさした。僕にもこんな風に笑えていた時があったんだな。そう考えるとなんだか胸の奥がほんの少しだけキュッとなった。
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