毒林檎と鉄仮面
「じゃあ、行こっか」
ノアは僕の腕をグイッと掴むと校舎の中へ僕のことを攫っていった。中は真っ暗でなにも見えなかった。
「うわぁ凄いねえ」
校舎に入って先に口を開いたのはノアだった。
「で、どこに行きたいの?」
僕はノアに尋ねる。ノアは顔を見なくても分かるテンションの高い声で
「プール!!」
と一言いって廊下を駆け出した。僕もそのあとをすぐ追いかける。Tシャツの中に風が走る。生暖かい風に僕はなんだか久しく感じていなかった幸福感のようなものを感じていた。ノアもなんだか今日は楽しそうだ。
「あははっ!楽しいかもこれ結構!ハマりそう!ねぇショウゴ早くおいでよー!」
ノアは階段を駆け上がる。プールは3階。それまでの階段がキツイ。夜の冒険。こんなに胸がざわざわするのはいつ振りだろうか。普段は絶対にやらない。今日だけ。僕は階段を一段飛ばしで上った。
プールの手前の扉を開くとノアがそこにいた。静かに夜風を浴びているその姿は天使だった。白く長い髪が僅かな壊れかけの電気の明かりに照らされてキラキラと光り風に揺れていた。
胸が苦しかった。僕はこの感情を知らない。強いて言えば、幸福感。そんなところだろう。
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