おじさんは予防線にはなりません
「……考えておきます」

「羽坂ちゃんはいつもそれだよね」

少しだけ悲しそうに笑った宗正さんに針が刺さったように胸がチクリと痛んだ。

何度か食事やデートに誘われたが、一度だって応えたことはない。
それは宗正さんにとても失礼だと思うから。

「羽坂ちゃん」

食べ終わって休憩室の席を立つと、ぐいっと宗正さんの顔が寄ってきた。
なにをされるのか怖くて目を閉じたけれど。

「ストッキング、伝線してるよ」

こそっと耳元で呟かれ、目を開けたらいたずらっ子のように宗正さんが笑っていた。
慌てて足を見ると、右足の膝下から確かに伝線していた。

「あ、ありがとうございます」

一気に顔が熱を持つ。
こんなことを男性に指摘されるなんて恥ずかしい。
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