おじさんは予防線にはなりません
「花火もきれいだけど、詩乃もきれいだね」

そっと、宗正さんの手が私の頬にふれた。
じっと私を見つめる瞳に私も見つめ返す。

「詩乃が、好きだ」

ゆっくりと傾きながら顔が近付いてきて、目を閉じた。

……これで池松さんを忘れられる。

でも本当にこれでいいんだろうか。
私は宗正さんの気持ちを弄んでいるだけなんじゃ。
それに、こんなことしたって、私の気持ちが変わるとは思えない。

「い、嫌」

目を開けると唇がふれる直前だった宗正さんは顔を離した。

「それはオレが嫌いだから?」

泣き出しそうな顔に胸がずきずきと痛む。
私がふるふると首を振り、さらに宗正さんは聞いてきた。

「池松係長が好きだから?」

俯いたままきつく唇を噛んだ。
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