おじさんは予防線にはなりません
ふるふると震える手で私にマニュアルのファイルを差し出し、書類とサンプルの城壁の向こうへ本多課長は姿を消した。
仕方ないのでマニュアルを読みつつ、電話を取って過ごす。

「大変だね、君も」

気づいたらさっきの男――池松さんがまた、椅子に後ろ向きに座っていた。

「まあ、これでも食いな」

差し出される拳に手を出すと、またパインアメがそのうえに乗せられる。
池松さんはポケットから自分の分を出して、ぽいっと口に放り込んだ。

「本多さん、帰ったか」

「……はい」

教育係が新人をひとり残して帰るとか、許されるのかな。
でも、体調不良だったら仕方ないよね。

「じゃあ、おじさんがそのマニュアルに載ってないことを教えてやろう」

池松さんがにやっと笑い、思わずごくりと唾を飲み込んでいた。
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