おじさんは予防線にはなりません
無様に尻餅をついて見上げたら、ハンガーラックを引いた新本(しんもと)さんがブラウンのシャドーをつけた目を吊り上げていた。

「気をつけてよね!」

「すみません」

慌てて立ち上がって道をあける。

「事務は暇なんだろうけど、こっちは忙しいんだから!」

新本さんはカツカツと七センチヒールの音を威勢よく響かせて進んでいく。

「キャッ」

私の視界から消えたところで小さく悲鳴があがる。

「そんなとこいたら、じゃま!」

きっと、前なんか見ずに我が道を歩いて行っているんだろう。
でも、そんなことはここでは珍しくない。

はぁっ、ため息をつきつつ机に戻ると、今度は布浦(ぬのうら)さんが待っている。

「いつまで待たす気ー」
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