おじさんは予防線にはなりません
「……」

そこは笑っていいのか判断に苦しむ。

本多課長が私の父より若いと知ったときは思わず二度見してしまった。
どうみても本多課長の方がずっと年上に見えるのだ。

「まあその分、俺が愚痴でもなんでも聞くわ」

椅子から立ち上がり、池松さんはひらひらと手を振って行ってしまった。
いなくなって、もらったパインアメを自分の口に放り込む。

……池松さんにはかなわない。

私が嫌な思いをしているといつも、ふらっとやってきて励まして去っていく。
きっとまだ、この会社を辞めずにやっていけているのは池松さんのおかげだと思う。

「元気も出たし、この領収書、どうにかしなきゃね」

毎回くれるパインアメは、私の元気のスイッチを押してくれる。
気合いを入れ直して私は、仕事の続きをはじめた。
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