おじさんは予防線にはなりません
「ん?
用はねーわ」

「はい?」

いたずらっぽく八重歯を見せてにやっと笑う池松さんについ、首が傾いてしまう。
用があるからわざわざ私のところに来たんじゃないんだろうか。

「ただ、今日も羽坂の眉間に、消えないくらいふかーい皺が刻まれてないか見に来ただけ」

「あ……」

つい、自分の眉間にふれてしまう。
きっとさっきはふかーい皺が刻まれていただろう。

「落ち込んだときは糖分補給」

差し出された拳に手を出すと、その上にパインアメが落とされる。
池松さんはもう一個ポケットから出して、自分の口にぽいっと入れた。

「ほんとは本多さんがもうちょっと、気遣ってやればいいんだけどな。
あの人、ここに配属されてからどんどん、影と髪が薄くなっていったからな」
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