おじさんは予防線にはなりません
「お魚屋さんがいいあじが入ったって言ってたので」

テーブルに着き、池松さんがひとくち食べるのをドキドキして待った。

「うまいな」

もう、笑ってそう言われるだけで、一日の疲れが吹っ飛ぶ。
たわいのない話をしながら、今日もふたりでごはんを食べた。
池松さんは家に帰って、誰かが自分のためにごはんを作って待っていてくれるのが凄く嬉しいらしい。

――世理さんと結婚してから一度も、そんなことはなかったから。

新婚時代ですら、世理さんは仕事と男関係が忙しくて家にいなかった。
毎日、誰もいない家に帰り、ひとりでごはんを食べていた池松さんを想像すると、苦しくなる。

でもそれでも、池松さんは世理さんを愛していた。
世理さんも、十三年も池松さんとの夫婦関係を続けたのに、どうしていまさらだったんだろう。

「明日は休みだし、泊まっていくだろ」

「そうですね」
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