正義が悪に負ける時
「ごめんね・・・アキラ・・・。」
小学校4年生の記憶ともなれば、
今でもちゃんと頭に残っている。
病院のベッドで横になる母。
“乳がん”という病気についての知識はその時の僕には無かったが、
母がもう長く生きられないという事だけは感じ取っていた。
あの夏、母を失い僕の心は深い闇に閉ざされた。
それでも全うに生きていけたのは、
祖母や祖父がそれまで以上に、
僕へ愛情を注いでくれたから。
そして・・・・・中学生の時に出会った1人の女性のおかげだった。
「乙一、好きなんだ。」
「・・・・?」
中学に入学してしばらくが経ったある日の放課後。
学校の図書室で本を読んでいたら、
ふいに声を掛けられた。
見上げた視線の先にいたのは大人びた女性。
たった1年先に生まれただけだったかもしれないけど、
あの頃の僕にとって“先輩”は1年以上の差を感じさせた。