正義が悪に負ける時
「気付かなかったか?」
「何をです?」
「ちょっとそこのコンビニに停まれ。
説明するのに運転中は危ない。」
言われた通り、ちょうど左手にあったコンビニの駐車場へ入る。
「お前、この写真を見せて梶山に何て説明した?」
真田さんは手に持っていた滝川ゲンジの写真を俺に渡してきた。
「“奥様と同じ被害者です”
って言いましたけど・・。」
「その後に、
“奥様の体で検出された毒が、
この男からも検出されました”
って言ったな。」
「そうでしたっけ?
あんまり覚えてないですけど。
・・それがどうしたんですか?」
「この事件って川辺課長が記者クラブの奴らに根回ししてまだ世間には出てないんだよな?」
「ええ。まだ紙面にも出てないはずです。」
「って事は滝川ゲンジがフユミと一緒の部屋で死んでたって事をあいつはまだ知らなかったはずだ。」
「・・・・・・・・・!?
まさか・・・・・。」
「だったらどうして梶山は、
“同じく毒殺された被害者”
って情報だけですぐに、
“妻はこの男と不倫してたんですか?”
って結びつけられたんだろうな。」
「いやそれはだって、
“フユミはホテルの一室で死んだ”という事は知ってたからじゃないですか?」
「現場がラブホテルだったら・・
もしくはその写真がイケメン君,フユミと同年代の男だったらそう考えても不自然じゃない。
だけどこんな年齢以上に老けて見える、お世辞にも女にモテるとは言えない見た目の男だぞ?
この写真見せられて、
“同じ被害者だ”って言われたら、
例えば同じホテルに宿泊していた客とか、日本料理店“一心”で夕食を食べた客とか、
頭の中で広がる選択肢はたくさんあるはずだ。
なのに梶山は何の迷いも無く、
“妻と不倫してたんですか?”
って俺達に聞いてきた。」