この溺愛にはワケがある!?

男らしくすっぱりと!?

「っくしゅん!!あたっ!」

美織は派手にくしゃみをした。
同時に頬に痛みが走り『あたっ』という変な声も出てしまう。
隆政は玄関を閉めるのを忘れていて、冷気がガンガン侵入している。
朝も言ったがもう一度。
12月中旬であるっ!!
寒いに決まっているっっ!!

「あ…………ごめ………」

力なく言った隆政は、静かに玄関を閉めた。
冷気の充満した玄関に耐えられず、美織は隆政の冷たい手を引いて台所に向かった。
元気のない彼は促されるまま付いてくる。
その姿は叱られた大型犬のようだ。

「夕御飯って食べた??」

「……いや、まだ」

その力のない様子にひょっとしたら、と美織は考えた。
空港からトンボ帰りしたのなら、お昼ご飯も食べてないのかもしれない。
思い詰めてお腹が空かなかったのかも……。
窶れた外見を見て、きっとそうだと確信した。

「お昼もまだよね?私今日雑炊にするんだけど、一緒に食べる?」

「………………………」

隆政は何も答えない。
だが、上目遣いでチラッと美織を見ている。

(遠慮してる………いいのかなぁ、って私の様子を窺っている!!わかりやすい!)

「ついでに作るから。食べて行って」

「うん………ありがとう」

(う、う、嬉しそうっ……ぷっ、子供かっ!)

はにかんで目を伏せる様子に美織は珍しく萌えた。
台所の隅に座る隆政は、ロングコートも脱がず、邪魔にならないように出来るだけ小さくなっている。
だがその存在感は全く消せていない。
それをわかっているのか、気配を消そうとして息を止めてみたりしているが、何の成果も上げられていない。
もう美織は堪らなくなって、雑炊を作る手が震えついでに肩も震えた。
そしてついに吹き出した。

「ぶふっ!」

「え?」

唖然とするその顔すらおかしくて、美織は更に吹き出し大声で笑った。

「ふふっ……っあはははは!!」

「はぁ??何が……何かおかしいか?!」

「隆政さんが………あはははっ、はぁ、もう笑わせないでよ」

「…………みおが勝手に笑ってるだけだ、俺は何も………」

「くっ……ああ、うん、そうね、うん」
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