この溺愛にはワケがある!?

彼との時間

昼食後は美織の部屋に移動して、古いアルバムを見たりテレビを見たりと、のんびりとした時間が流れた。
どこかに行くのも楽しいけど、こんな風にまったりとした時間も案外いいものだ。
そして、意外にもアクティブそうに見える隆政も実に楽しそうである。
特に美織の小さい頃のアルバムが気に入ったようで、飽きもせず眺めていた。

「可愛いなぁ。こんなに可愛かったら、モテただろ?」

「モテるわけないでしょ??可愛いなんて言うの、隆政さんと身内くらいよ」

「そうか?そんなことないと思うが。あ、これ、七五三だな……ああ、この頃から着物が似合うな!!」

「えっと、どうもありがとう」

(何故こんなに褒め倒すんだろう……恥ずかしくて堪らないっ!)

「そうだ、みお進水式に出ないか?」

「進水式?あ、船の式典ね!」

進水式とは造船の盛んなこの地域では馴染み深い式典で、船を初めて水に浸けることから『進水式』と呼んでいる。

「そうそう。毎回会社の女の子に着物で参加してもらって、手伝ってもらうんだよ。それをやってみないか?」

「え、でもいいの?私、従業員でもないし……」

と、渋ってみるが本当はとても興味がある。

「大丈夫。ボランティアだったら、公務員でも問題ないだろ?うちの会社もみおだったら爺さんがノーっていうはずはないからな」

「そ、そう?問題ないなら……やってみようかな?」

「うん!頼むよ!当日の振袖は好きなものを選んで着ていいから。俺もずっと一緒にいるし」

「ありがと。で、いつなの?」

「来週の日曜日。大丈夫?」

「大丈夫。特に予定ないわ」

と言って少し恥ずかしくなった。

(予定がないって……どれだけ寂しい子なんだって思われてる、絶対!)

だが隆政はそんなことを思う様子もなく、また楽しそうにアルバムを捲っていた。
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