かわいい戦争
「安心しろよ。ちゃんと全員相手してやっから」
「……っ」
「もちろん、お前もな」
特ダネを撮っても逃がさねぇぞ?
とでも言わんばかりに眼光で突き刺した。
よっぽど轢かれそうになったことが気に食わないんだろうな。
「今朝カメラ売ったばっかだったしちょうどいいや」
「あれ本当に売ったのか!?……信じらんねぇ。しかもまた奪おうとしてるし」
「あいつの持ってるやつも新型だといーけど」
「ちゃっかり期待してんじゃねぇよ。新型でも何でも奪うなよ!」
カメラをまじまじ観察する天兒さんに、勇祐くんはガミガミ説教する。
マイペースにもほどがある2人のどでかい言い争いに紛れて、
「……いいですね」
褪せたソプラノをすくった。
「リタ先輩は外にこんなに仲間がいたんですね」
「っ、んんん!!」
「ほんと、ずるいです」
声量とは裏腹に、グイ!と強く縄を引っ張る。
締め付けられた璃汰の体が苦しげに縮こまった。
「やめて!!」
ピタリ。
まろんちゃんの手が静止した。
あそこにいるのは、本当にまろんちゃんなの?
「ど、して……どうして璃汰を傷つけるの?あんなに璃汰を慕っていたのに……どうしてあの男と組んでこんなことを!?」
「どうしてどうしてうるさいな」
グループ随一歌がうまくて
メンバーに妹みたいにかわいがられてる
あのまろんちゃんが、わたしを鋭く睨んでる。
そういえば。
はちみつ色の髪は今日もツインテールに結っているのに、赤いリボンは付けていない。