かわいい戦争



「一度不幸に堕としたかったんですよ」



あぁ、きっと

あそこにいるのは


わたしの知ってるまろんちゃんじゃない。



「ま、まろ、ちゃ……?」



――ガンッ!!



一歩踏み出した刹那、鈍い地響きを立てられた。


記者の横にいる不良がニヤついていて、思わず顎が震える。



あの不良が鉄パイプで地面を叩いたんだ。



「こちらに近づかないでもらえます?」



まるで、牽制。



「っ、……璃汰を、返して」


「なら力尽くで助けてみるのはいかがですか?……まあ、どうせすぐに諦めることになるんでしょうけど」



まろんちゃんの手のひらから、縄の端っこが垂れ落ちる。


地面に座り込む璃汰をきつく見下した。



「リタ先輩にはここで見届けてもらいますよ。見るも無残な仲間の最後を、ね」



ふふっ、とこぼれた可憐な一笑。

黒い表情と合ってなさすぎて違和感しかない。


ライブで観た面影は、皆無だった。



まろんちゃんは今はもう、リタを好きじゃないの?


嫌いになっちゃったの?



「じゃあ力尽くで取り返しますか~?」



緊迫した空気に噛み合わない、締まりのない口振り。


警戒一色だった心内がほんのちょっと安らいでいく。

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