かわいい戦争
「理由は、わからない」
「気に入られたんじゃね~?」
学ラン肩かけ男は、頭に浮かんだ言葉をそのまま口から放った。
そうに違いない。じゃなきゃこんな曖昧に言わない。
きっと面白がってるんだ。
『なおさらおもしれーじゃねぇか』
高身長の男の子みたいに。
でもその安易な発言のせいで、周りの女の子たちがよりいっそう騒ぎだしてしまった。
「今の聞いた!?」
「洋館に誘いに来たらしいよ!」
「あの子を?」
「気に入られたとかなんとか」
「まじで!?」
これは確実に噂になる。
明日から大変……って、いやいや、待て。
違うぞ、わたし。
わたしが今考えるべきことは、周囲じゃなくて自分のこと。
自分の安全のこと。
「す、すみませんが、ご遠慮させていただきます!」
もう一度謝り、頭を下げようとしたら、
「どうして?」
美人な男の子が、コテンと首をかしげた。
「どうしてって、そんなの……」
嫌だからに決まってる。
神雷と関わっても怖い思いをするだけ。
悪いことが起きるだけ。
お店の常連さんも言ってた。傷つくだけだ、って。