愛されプリンス½
ピタ、と妃芽ちゃんが足を止めた。
「…どうして?」
「なんていうか…天王子、無駄にモテるから。ファンクラブもあって、天王子に近づきすぎると反感買っちゃうっていうか…」
「そんなのどうだっていい」
きっぱり妃芽ちゃんが言い切った。
「私、玲に近づくためにこの学校に来たんだもん。周りから何思われたってどうでもいいよ」
いつもはフワフワした雰囲気なのに、その時の妃芽ちゃんはきっぱり芯の通った強さで。
妃芽ちゃんって…
「…好きなの?天王子のこと」
ポロ、と気付いたらそんな言葉が漏れていた。
妃芽ちゃんがにっこり笑う。
「大好き」
「…そうなんだ」
「うん。別れてからもどうしても忘れられなかった。私、分かったの。玲しか好きになれないんだって」
――そんなに誰かのことを好きになったことなんて、私は一回もない。
素直に羨ましい…。
こんなに可愛い子に、こんなに想われて、天王子のくせに幸せ者だ。
「…何で別れたの?」
こんなこと聞くのは不躾かとも思ったけど、気になって聞いてしまった。
妃芽ちゃんは少しの間の後、ポツリと独り言のように、呟いた。
「…私がめちゃくちゃに…傷つけたから」