夏に消えた彼女
彼女と出逢ったのは夏休み前の7月。
梅雨が明けて太陽が燦々と降り注ぐ澄みきった青空の日だった。
「何してるの?」
海の傍の岩場で釣りをしていた僕に声をかけてきたのが彼女だった。
白いワンピースに麦わら帽子。
漫画に出てくるヒロインの定番みたいな格好をした彼女に、僕はただ「釣り」と答えただけだった。
「釣れる?」
そう言って隣にしゃがんだ彼女は僕の手元を興味深そうに覗き込んでくる。
「ボウズ……」とまったく釣れていないことを告げれば、
「私もやってみたい」
と笑う。
「簡単に釣れるわけない」、そう思いつつ竿を彼女に手渡せば、彼女は嬉しそうに僕の隣に座って竿を握る。