夏に消えた彼女
「釣れないね……」
僕の思った通り魚は簡単に釣れることはなくて、彼女はがっかりしたように肩を落とす。
「だな……。てか、キミ誰?」と問えば、彼女は名前を名乗って、先日引っ越してきたのだと教えてくれる。
もうすぐ夏休みだと言うのに、引っ越しとは何ともタイミングが悪いように感じた。
「キミの名前は?」
当然だが、彼女は僕にも名前を尋ねてくる。
僕自身の名前も言えば、彼女は「名前、似てるね!」なんて言いながら笑った。
──可愛い笑顔だった。
よく花が咲いたような笑顔。
そんな例えがあるけど、まさにそんな例えがぴったりな笑顔だった。