はちみつの景色



ガラ…


消毒をしている中川さんは顔をあげずに話す。

「…今先生いませんよ」

「中川さん」
「花山くん…?」

今日は絶対喋れないと思ったから、目の前にいる中川さんにテンションが上がる。

「花山くん、どこか痛いの?」
「ううん、ちょっと休憩。」
「保健室は休憩所じゃないよ、花山くん」


違うよ


「違うよ、中川さんが休憩所」

中川さんに会いたかったんだから。

そう言って、中川さんの横に座る。


「えっと…「果乃って呼んでいい?」

「え?」

中川さん困ってる。
急に名前で呼ぶなんて、自分って勇気あるな、必死だな、俺。


覗き込めば、白い肌が少しだけピンクになる。可愛い。

「は、花山くん!近いよ‥」
「千景だよ」

肩あたりを押し返す手も弱々しくて、本当に、もう理性が吹っ飛びそう。


「千景って呼んでほしい」
「ち、千景‥くん」

わわわわわ…ぁあ…


「果乃ってずっと呼びたかったから嬉しい」

「ち、千景くん、わたし心臓が持たない」「俺も緊張してる」
「うそ…」


緊張してるはずなのに、口からするする気持ちが出てくる。
果乃って呼ぶだけで、胸がぎゅーってなる。




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