学年1のイケメンが探してる美少女は うちの弟です
「和真くん ちょっと待って、まだ撮らないでっ!!」
携帯のカメラを起動させた時、育美ちゃんがパーカーを脱ぎながら声をかけてきた。
「これ着て撮った方がいいよっ。 だってある程度フェイク入れとかなきゃすぐ特定されちゃうでしょ?」
「え、でも……」
「男物だから大丈夫っ、見た感じサイズもピッタリな気がするしっ」
「……ありがと。 じゃあ遠慮なく」
育美ちゃんのぬくもりを感じながら、ファスナーを目一杯上げる。
Tシャツ姿になった育美ちゃんは「唐草 美麗が私の服を着てるっ」と、何故か目をウルウルさせていた。
そんな育美ちゃんに苦笑したあと、みんなから距離を取る。
俺以外の写り込みはない。
自然の中だから、鏡や建物の窓など、景色を反射する物もない。
大丈夫。
SNSにアップしても、俺が森林公園に居るという事実が伝わるだけで みんなに迷惑をかけることはない。
大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
マスクをつけてるけど、いつもと同じように笑みを浮かべる。
カシャッ
という音のあと、パーカーでマスク姿の俺の写真が携帯に保存された。