罪作りな彼は求愛方法を間違えている
罪作りな男に恋してます

駅前にあるスタイリッシュな街に背を向け、一昔前からあるモダンな建物が並ぶ商店街に向かう。

昼間は賑やかな商店街も夜にはシャッターは降りて閑散としている。その少し奥まった場所に店舗を構えるバー【S】ストーリーの木製のドアを開けると、真っ先に耳に心地よいジャズが聴こえてくる。

そして、こじんまりとした店内のカウンターの向こうからマスターが微笑み、いつものように千花が定位置としているカウンター席に目を向けると、バイトの男の子が私が座る椅子を引こうした。その彼の動きを静止させ椅子を引いた男がこちらを見て微笑んでいるその光景を私はボーと見つめていた。

「ほら、座れよ」

ニヤリと口元に笑みを浮かべ促す男、高橋 斗真がこうして声をかけてくるようになったのは、一年ほど前からだろうか⁈

今日も細身のスーツを着こなし、腕には高そな腕時計、袖口から見えるカフスボタン、そして首元とネクタイの結び目を緩め少し着崩した姿が色っぽく目を惹く。

身につけている物や仕草が嫌味に見えないのが憎らしく、座っていてもわかる高身長にスーツの上からでも引き締まった体躯が伺える。そして長い脚を組み肩肘をついた男は体半分を私に向けて見ていた。
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