罪作りな彼は求愛方法を間違えている

少し長めの茶色い髪にナチュラルパーマをかけキリッとした眉に目力のある瞳、鼻梁がスッと高く薄い唇がとてもセクシーな男。

相変わらず、いい男だわ…と心の中で呟き、椅子を引いてくれた高橋 斗真にお礼を言いながら椅子に腰かけた。

「ありがとう」

肩にかけていたショルダーバッグの紐を椅子の背にかけてる間に、目の前では冷えたグラスにビールを注ぐマスターの姿があり、頼まなくても飲みたいアルコールが出てくるあたり、流石、私の好みを把握しているなぁと感心する。

「おつかれさん」

そう言いスッと差し出すマスターは、千花の従兄妹である。7つの年齢差があったが双方の両親が兄妹という事で小さな頃はよく遊んでもらっていたのに、私が小学生になった頃から年に一回顔を合わせるか合わせないぐらいになり、ここ数年はあまり接点はなかった。だが2年前に従兄妹がこのお店をオープンした時、割と近所に住んでいた私は、お祝いがてら来店したのをキッカケにして、今では居心地の良さと、従兄妹が作ってくれるスペシャルメニューという名の美味しい晩ご飯につられて毎週金曜になると5日間頑張った自分のご褒美にと理由をつけ通っている。

「コウ兄、ありがとう」
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